シグナル①(2018/4/10放送):”引きずっている過去”で面白さはある程度保証されるよね
三枝健人(坂口健太郎)は、幼い頃に起きた女児誘拐殺人事件で、被害者の女子児童を連れ去った謎の女を目撃。そのことを警察に訴えるものの相手にされず、15年後、事件は間もなく時効を迎えようとしていた。警察官になった健人は、ある日、廃棄予定の無線機から声がすることに気付く。(番組公式サイトより)
映像のクオリティからして他ドラマとは段違いの制作者の本気度が伝わるドラマ。色味も綺麗だし「映画っぽい」と思った人も多いのでは。韓国の同名ドラマが原作とのこと。夜中に見逃し配信を見たけど面白くって目が覚めたよ!
第1回の総評・・・★★★★☆☆
1. 韓国感ビンビン:チョン・ジヒョンは今
「シグナル」では、現在と過去の刑事が、とある無線機を使ってコミュニケーションを取る。この設定から思い出す映画が2つ。
・「オーロラの彼方に」:時を超えて親子が無線機で連絡を取る。
・「イルマーレ」:時を超えて男女が魔法のポストを通じて文通する。
他にも何かあったような気がするけど、とりあえずパッと思いつくのは以上の2つ。
そして僕が一番語りたいのは「なぜか映画で見ると超絶可愛く見えてくるチョン・ジヒョンの謎」だったりもするけど、そうすると「シグナル」とは微塵も関係なくなってしまうのでまたの機会に。
いやー、チョン・ジヒョンはハリウッドに行ってからというもの、とんと見かけなくなりましたね。寂しい。「猟奇的な彼女」の勢いで作った「僕の彼女を紹介します」とか、めっちゃ勢いだけで作った感満載(死んだ彼が舞い戻ってくるシーンとか爆笑もの)なのに、最後まで見れちゃうのはやっぱりチョン・ジヒョンだからです。「なぜか映画で見ると超絶可愛く見えてくる女優」はレニー・ゼルヴィガーとチョン・ジヒョンがトップ2だと思います。
本当にこれでチョン・ジヒョンについては以上とします。
このドラマの冒頭、主人公が小学生時代に見かけた女の子が殺されるという事件の回想から始まるけども、女の子を容赦無く死なせるあたり、めっちゃ韓国作品っぽい。傑作「チェイサー」とか「殺人の追憶」とかもそうだけど。
女の子がゴミみたいに死んでいく非情な演出。死ぬ人の死ぬ前の表情をちゃんと映すんですよね。で、「うわー、(精神的に)きっつ!」と観客の心を追い込みつつ、比例して物語に引き込んでいく道具としての残酷さ。この辺りは韓国映画・ドラマの一番上手いところなんじゃないでしょうか。
そして今回の日本版「シグナル」もきちんと味わわせてくれます。うわ、きっつ!!と。
2. “強烈な過去”の効用:誰にでもある後悔「どうして声を掛けなかったんだろう」
「うわ、きっつ!」は物語の冒頭には非常に有効に働く。観客の心を掴んだも同様なので。
誰しもが後悔してると思うんですよ。「どうして声を掛けなかったんだろう」って。恋愛ではもちろん、友達だったり、場合によっては他人のあの人に声を掛けるべきだったと後悔している人もたくさんいるに違いない。それぐらい「どうして声を掛けなかったんだろう」って、普遍性の高い後悔なのではないかなと。
なので、そういう後悔が無い人はひょっとしたら「シグナル」は楽しくないのかもしれない。昔の後悔を打ち消す事が主人公の原動力なので、その原動力を信じられない人にとっては「なんでそんな頑張るのか分からん」という事になるので。
少なくとも僕は中学校時代に告白する勇気が出ず、現在も日本人の3人に2人は患っていると言われている「どうしてあの時僕は彼女に好きと伝えなかったんだろう症候群」が進行中なもので、「シグナル」の主人公、三枝くんには「分かるぜお前の気持ち!つれえよな!」と拳を握りっぱなしなワケです。
因みに「強烈な過去」が現在も主人公を縛っているという設定でパッと思いつくのはジム・キャリーの「トゥルーマン・ショー」。ストーリーもさる事ながら、ジム・キャリーの演技も素晴らしいので是非ご覧ください。
3. 主人公はまだ少年:だから舌ったらずが実はちょうどいい
少し真面目な話を。
主人公を演じる坂口健太郎さんについて「舌ったらずなセリフ回しが気になる」という感想がちょこちょこあるらしい。まあ言わんとする事は分からんではないし、確かに彼はどの作品に出ていても若干滑舌に問題はある。
ただし、この作品については実はそれがプラスに働いているかもしれないとも思う。
というのは、先ほどのセクションでも書いたが、「どうして声を掛けなかったんだろう」という小学生時代の後悔を未だに引きずっている男なワケで、これはつまり、彼が”小学生の頃から変化していない”と脚本的には扱う事になる。事件の進展や解決と共に彼がその過去と向き合って成長していく過程がドラマの肝となり、その過去を克服したり、再解釈したりする事がイコール”彼が大人になる事”を示す事となる。
ということは、彼は(あくまで脚本術的に言えば)まだ子供なワケだ。
そして坂口健太郎さんの舌ったらずな台詞回しが「主人公がまだ幼い存在である事」の表現に、はからずもなっている。
ちょっと無理があるか。
4. 吉瀬美智子さんの身のこなし問題:「強い女」はムズイのだ
吉瀬さんの凛々しい美しさ、何時間でも見てられますね。本当お綺麗。
ただ、ちょっと吉瀬さんの身のこなしを見てると、「あ、こういう女優さん本当多いわ」と感じる。所謂「上から目線の女」を演じさせると、なんというか、肩で風を切ってる感じというか、動きがぎこちないんですね。無理してヒョウっぽい動きしてるというか。伝わらないと思うんですけど。
「強い女」を演じるのってものすごく難しいと思うんですよね。だって脚本からしてかなりワザとらしい「強さ」を求めてきてたりするから。例えば、書類とかを差し出されて即座に「ああ、それ、置いといて。」みたいな台詞、本当よくあるけど、嫌な女ならまだしも、強い女で「ああ、それ、置いといて」みたいに言うヤツいないからね。
日本のドラマの脚本で一番ダメなところって、「こういう人はこういう事言うよね」というステレオタイプに満ち満ちているところ。そうしないと視聴者がついてこれないでしょ、なんてのは完全に視聴者をナメきっている人の考えなワケで。事実相当ナメられてるけどね。
「シグナル」に関しては、そういうステレオタイプ的な強い女という描かれ方がされているとは思わないけど、やっぱり強い女の難しさっていうのはやっぱりあるワケで、役者としての体の使い方をマスターしていない吉瀬さんには少々ハードルが高いように見えます。大変失礼ですけども。
5. 今クールNo.1は確定
と、いろいろ御託を並べましたが、今クールNo.1のドラマである事はほぼ間違いないんじゃないでしょうか。他の全部見たワケじゃないけど、冒頭でも言ったように映像からして本気度が違いますから。韓国での大ヒットドラマという事でストーリーの面白さは担保されてるワケだし。
次回にも期待。