【2018春版】TVドラマをできるだけたくさん見て感想を書くブログ

脚本家目線で2018年春のTVドラマをできるだけたくさん見て感想をまとめます!

あなたには帰る家がある③(2018/4/28放送):なぜこれを第1話にしなかった!

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少し前回の更新から日が空いてしまいました。更新するにはドラマを見なければいけないという至極当たり前の現実の前に少しばかり脅威を感じております。とは言え、まだ少ない読者の方々から悪くない反応を頂いているので、それをモチベーションにまた悪口を綴っていこうと思います。

 

というわけで「あなたには帰る家がある」第3話。第2話は見逃しました。はっきり言って見逃しても全然問題なかった。つまりどういう事か?第1話と第2話は、ただの状況設定でわざわざ回数を割くほどの価値が無かった、つまりこのドラマは第3話から始めるべきだった、というのが僕の結論です。

 

第3話の総評・・・★★★☆☆☆

 

1. ドラマは最初のシーンから面白くあるべき

ブリーフ姿でガスマスクを着けた男が運転するキャンピングカーが荒野を猛スピードで疾走。
これだけで「はいもう全シーズン見るー」って気になりませんか?なりますよね。アメリカのTVドラマの大傑作「Breaking Bad」の第1話のオープニングです。

 

何が言いたいかというと、とりあえず冒頭のつかみは頑張りましょう。という脚本家の任務についてです。
今回の「あなたには帰る家がある」第3話のオープニングは、返り血らしき物を浴びた中谷美紀さんが自宅マンションのエントランスに入って来て他の住人がビビる、というシーン。そして少し時間を巻き戻して、「どうしてそうなったか」を見せていくというサスペンスではおなじみの語り方だけども、是非ともこれを第1話でやっていただきたかった。「血に見えたのはソースでした」というのはベタではあるけども、文字どおり「何も見るべき要素が無い」第1話よりは全然マシなわけで。

 

オープニング以降も、第1話と比べて人間関係や感情の変化がちゃんと起こっていて、語るに値する内容だったと思います。
「いやいや、それは第1話と第2話できちんと状況設定をしたからだ!」という意見が聞こえてきそうですが、バカを言っちゃいけない。状況設定だけで2話分も付き合ってくれるほど観客は暇じゃない。というか状況設定のシーンをいかに状況設定に見せないかは脚本家の最大の腕の見せ所の一つなんですよ。

第1話の最初のシーンから、もう観客との戦いは始まっとるんや。それを忘れたらあかん。


2. やばい状況で「やばい」という顔をするんじゃない!

とは言え、玉木宏さんの演技はいただけない。彼がしっかりしないと、この物語の全てが嘘になって信じられなくなって結果、ドラマを見る気を失くしてしまう。

何がダメなのかと言うと、ずばりこのセクションのタイトルのとおりです。やばい状況で「やばい」という顔をするのは、一人の時だけにしてくれ。ましてや妻(中谷美紀さん)という「やばいと思っている顔を一番見られてはいけない人間」が隣にいるのに「やべっ・・・」なんて表情をあからさまに出す人間がどこにいる?まさしく「ドラマ用」の作った演技で、まあ安っぽい。もやし1パックぐらいの値段にしかならねえ。28円+消費税だ。

 

あんたが「やばい」と感じていることなんて、それまでの文脈で猿でも分かるんですよ。なのに、そこで「やべっ」なんて説明過多且つわざとらしい表情されたら、「事実を隠さなければならない」というあなたの心情が全部嘘になって、結果シーンのおもしろさが半減どころかゼロになるんですよ。「事実を隠そうとしている様子」がシーンのサスペンスを演出するはずなのに、「最初から隠すつもりない奴」に見えちゃう。超台無し。もったいない。タダで見てるくせに「金返せ」という言葉が頭をよぎったのは俺だけじゃないはず。


3. しょうもない事はしょうもなく描いてはいけない:妻が見るのをやめた理由

前段とも関連する話ですが、玉木宏さん演じる「不倫していた夫」が、とにかくしょうもない男として描かれます。ここが非常に問題でして、しょうもない男をしょうもない人間と作品側がレッテルを貼ってしまうと、見ている側は「なんでこんなしょうもない奴のドラマを見なきゃいけないわけ?」とストレスが溜まります。事実、僕の妻は「くだらない」と言って少々機嫌を損ねてしまいました。きっと「時間を返せ(or 金返せ)」と思っていたのでしょう。

もちろん作品側が「こいつはしょうもない奴ですよ」と演出する必要があるキャラクターも存在します。ディカプリオの「ロミオとジュリエット」に出てくる、ジュリエットの婚約者とか良い例ですね。花火のシーンのアホ面は最高でした。映画自体は僕はあんまり楽しめなかったですが、彼のしょうもなさは最高でした。

 

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翻って玉木宏さんのキャラクターはというと、彼を「しょうもない」と判断するのはあくまで観客がやるべきことであって、作品側が「コイツはしょうもない奴だ」とアピールしてはいけないんですね。そうすると彼の不倫に怒る主人公の中谷美紀さんまでしょうもなく映ってきて、主人公がしょうもないという事はこのドラマもしょうもないという事になる。この負の連鎖。戦争が無くならないわけだ。

立川談志師匠の「落語は業の肯定」という言葉がありますが、これは落語に限らず芸術は全てそうだと思います。業、即ち「人間の(マイナスな意味での)本質」を受け入れること。このドラマはその逆を突っ走っているわけですね。

というか、彼を「しょうもない人間」と断罪できるほど、このドラマの制作者たちは立派な人間なのか大いに疑問っすけどね。

 

4. 木村多江さんの恐るべきリアリティ

木村多江さん演じる玉木宏さんの恋人は、そりゃもうリアルです。いますいます、こういう静かだけどクシャッと笑う、なんか動きもヘニャヘニャしててフェミニンな服が大好きで、ベッドの上では男が喜ぶ乱れ方して、とにかく「あなたと一緒に過ごせて幸せ」感を道にマーキングできそうなぐらいプンプン出してる奴(被害経験アリ)。

もちろん木村多江さんの演技力のなせる技なのですが、彼女の出ているシーンはもういつセックスが始まるのか分からないほどなんかイヤラシイ。これはこれですごくドラマとしては良い事だと思うのですが、それを玉木宏さんがたまにぶち壊すのが非常に残念。
この写真をご覧ください↓

こういう女性には注意しましょう。