【2018春版】TVドラマをできるだけたくさん見て感想を書くブログ

脚本家目線で2018年春のTVドラマをできるだけたくさん見て感想をまとめます!

シグナル②③④(2018/4/17, 2018/4/24, 2018/5/1放送):非日常をどう受け入れさせるか、それが問題

f:id:seiji4369:20180510012341j:plain

 

一つ事件が一件落着したので第2回から第4回をまとめて書く事にしました。結論から言うと「普通の刑事ドラマ感」が出てきたのが、韓国ドラマのやるせなさを期待していた自分としては少しがっかりした、というのが正直なところ。でも作り手の真剣味が伝わる熱気あるドラマです。面白い。


第2回〜第4回の総評・・・★★★★☆☆

 

1. 反省をさせたがり症候群


面白いんです。人間もよく描けているし、キャラクターは立っているし、サスペンスの盛り上げ方も上手いと思います。めっちゃ上からですけど。北村一輝さん演じる過去の刑事が、未来からの坂口健太郎さんからの「いついつにどこどこで◯◯さんが殺されます」という忠告を受けて「助けに行かねば!」って焦るけど、手錠に繋がれちゃってて「うおおお!」ってなるシーンなんか、ものすごくヤキモキしましたもんね。破天荒な捜査をする北村一輝さんにしびれを切らした同僚に手錠を嵌められちゃった訳ですが、「お前なんかこうだっ!」つって乱暴に手錠嵌められる所とかめっちゃ韓国っぽいですよね。もちろん、あくまで映画で見る韓国ですけども。人をやたら雑に扱うあの感じ。

 

ただですね、結局事件解決と同時に犯人、今回はモロ師岡さん演じる犯人の父親でしたが、反省させるんですね、主人公の坂口健太郎さんが。「あなたがやったことは・・・!」つって。それが所謂「普通の刑事ドラマ感」です。勝手に名付けてますけども。水戸黄門から(いやもっと前からか)脈々と受け継がれてきた「悪人は反省すべし」という伝統。モロ師岡さんが「あぁあああ!」と叫んで連続殺人の被害者の女性達の写真を手に取る。心の底からのごめんなさい。大反省。これがすごく僕には邪魔に感じました。彼が泣き叫んで反省をする事で視聴者は多少なりとも溜飲が下がる訳ですが、「シグナル」に関して言えば韓国ドラマ特有の「やるせなさ」をもっと前に出してほしかった。これは好みの問題ですけどね。でもあまりに綺麗に終わろうとしている、まとめようとしているのが、少しわざとらしく感じたわけです。

 

なんなら罪は認めるけど全く後悔を見せないモロ師岡さんを前にして、日本での犯罪捜査の洗礼を受ける主人公、というシーンを見たかった気もします。繰り返しますが、これはあくまで好みの問題ですけども。

 

2. 時空を超えた通信の受け入れ方:ウディ・アレンのすごいトコ


これがこのドラマの一番の壁というか、最もこの作品を書くに当たって気を配るところだと思います。「過去と未来の人間が無線で通信する」というSF設定を、どう現代の一般社会のドラマに組み込むか。前回のシグナル評で取り上げた「イルマーレ」でも、なかなかこの設定を登場人物は受け入れない。そりゃそうだ。「まさか・・・まさかねえ」を繰り返して色々試した結果やっと、「まさか・・・マジか・・・!」と信じる事になります。日常に非日常が入り込んでくる(極端に言えば「スパイダーマン」なんかもそうですね)作品においては、そのSFチックなできごとについて「本当に起きているんだ」と主人公が信じるタイミングがファーストターニングポイントになっている事もしばしばですね。

つまり「どう信じさせるか」は脚本家の腕の見せ所になってきます。特にTVドラマのようにあまりそこに時間が割けない場合は尚更、効率良く信じさせないといけないから、さあ大変。

で、「シグナル」はどうだったかというと、割と抵抗なく「これは過去の大山っていう刑事と通信できる無線なんだ!」と信じているように見えます。何がきっかけだったかは正直覚えてないので、”だんだん信じた”という事だったんだと思います。忘れてただけだったらごめんなさい。

知り合いにはよく喋る事なんですが、映画監督・脚本家のウディ・アレンの最もすごい所は、登場人物が取る行動、どれを取ってみても「そうするしかないよね!」と思わせてくれる所だと、僕は思っています。「カサンドラズ・ドリーム」なんかはその最たる例。めちゃめちゃ面白いので未見の方は是非。

優れた作品は全部そうですね。キャラクターの行動に必然性があって、且つ観客から見ても合理的です。逆に「いや、そこはこうすればいいやん」と思わせてしまったら、もうその作品はその時点で負け。脚本家の都合のいいように、脚本家の進めたい方向に話を運ぶために無理やり取らせた行動というのは、すぐにバレます。

「シグナル」にそういう無理があったとは思いませんが、やはりこのSF設定をどう主人公が受け入れるのか、という所はもっと印象的に描いてもよかったのかなと思います。もちろん僕が忘れてしまっている or 見落としているだけという可能性もありますけども。

3. 北村一輝さんの絶妙さ

これは是非とも強調しておきたい。北村一輝さんは圧倒的に素敵です。

90年代という「そんなに昔じゃない過去」って、演じ方が結構難しいと思うんです。もちろん演出も。昭和だと「昭和感」という何となくの共通認識がありますが(もちろんその「っぽさ」だけに頼るのは危険ですけども)、90年代ってまだ映画の中やドラマの中でも世界観が確立されていないように思えます。で、現在、つまり2018年と90年代のキャラクターの間で「人間的な差異を出す」事がドラマを盛り上げるために必要になってくるのですが、90年代の人間にどの程度まで洗練されていない感じを出すかという点で、北村一輝さんは最高の役作りをされているのではないでしょうか。本当に上手い。すでに妻には力説しておきました。

色々と御託を並べましたが、面白いです。次回以降にも期待!!