【2018春版】TVドラマをできるだけたくさん見て感想を書くブログ

脚本家目線で2018年春のTVドラマをできるだけたくさん見て感想をまとめます!

コンフィデンスマンJP①(2018/4/9放送):この世知辛い世界で我々は何を信じるべきか

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コンフィデンスウーマン(信用詐欺師)のダー子が、真面目で小心者のボクちゃんと、百戦錬磨のベテラン・リチャードと共に、悪徳企業のドンやマフィアのボスなど欲望にまみれた金の亡者達から、あらゆる手段を使って金を騙し取る物語。(Wikipediaより)
 
いろんな意味で信頼のブランド「月9」の新ドラマ「コンフィデンスマンJP」が始まったね。
脚本はこちらもいろんな意味で信頼のブランド古沢良太さん。「ふるさわ」じゃなくて「こさわ」って読むそうです。映画なら「キサラギ」、ドラマなら「リーガルハイ」が有名。超が付く売れっ子脚本家。
 
第1回「ゴッドファーザー編」の総評・・・★☆☆☆☆☆

1. 冒頭の失策:こいつらの事が最初からマジでどうでもよくなる問題


わかるんですよ。詐欺師が主人公のドラマで「スティング」に触れたくなるのは。そりゃ触れたくなりますよね。
でもさ、そういうオシャレな事やる前に、詐欺師がドラマの主人公の場合、冒頭でやらなきゃいけない事って、次の2つのうちどっちかしか無いと思うんすよ。 
 
 ・詐欺師としてめっちゃ凄腕である事を示す
 ・めっちゃ危機的状況である事を示す
 
今回は冒頭で「詐欺師としてめっちゃ凄腕である事を示」そうとしてるのは明らかですね。冒頭の流れはこんな感じ↓

【賭場で→俺のお金返せ的な感じで喧嘩に→人が死んじゃう→警察が踏み込んでくるのでカモが逃げる→警察含めてみんなグルでした】
 
結果から言うと、全くもって凄腕に見えてくれない。なぜか?
 
だって登場人物自ら語っているように(!)、「スティングのやり方まんまやっただけ」だものっ!
それって有能な詐欺師じゃなくて、ただのイタい映画好きじゃねえか!ホームアローン見て迷惑なトラップを家中に仕掛ける素敵な悪ガキと同じだよ!スティングが好きなのは俺と一緒だね!

「実は踏み込んできた警察役の人も騙されてて、長澤まさみ達がお金は全部持ってっちゃいました」というオチがつくけども、え、まさかそこだけで彼らのスペシャリスト感出そうとした?大谷君が海の向こうであんなに活躍してるのに、彼らはそれだけで評価されると思ったんですか?いやいや、無理無理。だって7回1アウトまでノーヒットだよ!SHO TIME。という訳で冒頭で彼らへの興味を失う=彼らがどうなろうと知ったこっちゃないので、番組終了まで見続けるのが苦行もいいとこなワケです。しかも初回拡大版なのが更に絶望を誘う!それなら見るなって?

いや仰る通りですけども、この記事書くために見てるので見なきゃいかんのです。
じゃあこんな記事書かなきゃいいだろって?それを言っちゃあおしまいです。それだけは言っちゃいけない。すいません。
 

 2. マジかマジじゃないかが分からん:長澤まさみの色仕掛けに効果が無いワケがない問題


どんでん返しとかミステリーとかでものすごく気をつけなきゃいけない事の一つとして、「余計な事で疑問を持たせない」というのがある。
例えば推理もののドラマ見てて「なぜヤツは・・・髪の毛チリチリなんだ!?」とか思わせちゃいかんワケで。もちろん髪の毛チリチリが事件解決の鍵になる場合は別ですよ。「ハッ!落ちていたのは陰毛ではなかったのか・・・!」
 
とにかく、騙す騙されない合戦の物語においては余計な疑問を持たせないようにしないと、リアリティの基準をどこに置いたらいいか分からんので、興味を失っちゃうんですね。映画用語でいうところの「リアリティの置き所」ってやつ。そういう意味で、やたらボケツッコミ色の強い会話のやり取りとか、長澤まさみが暮らしているやたらメルヘンチックな家がもはや死後の世界なのかってぐらい実在感が無かったりとかっていうのが、ものすごいノイズになってる。超邪魔。
 
何より一番のノイズが、「長澤まさみの色仕掛けは通じない」という設定。
いやいや、近年更に美貌と色気に磨きがかかっている至高の美女・長澤まさみさんであれば、どんなにアグレッシブなお誘いであっても、あんなにプイっと無視されるなんて事ありえないだろ。少なくとも葛藤はしろよ。
 

ダー子/長澤まさみ #コンフィデンスマンJP #詐欺師 #4月クール #長澤まさみ

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っていうかさっきまであんなバカみてえなボケツッコミ台詞のやり取りは平気でやるクセに、長澤まさみのアグレッシブなお誘いは通じないって、こっちは一体何が本当なのか分からんじゃねえか!一応言っとくけど、この場合の「何が本当か分からん」ってのは物語とは全然関係無いからな!ただのノイズ!
 

 3. ルパン三世のノリだけ問題


飛行機から現金が入ったカバンを投げ捨てたり、その持ち主が「俺の金だー!」つって飛行機からスカイダイブするあたりとか、なんかルパン三世っぽいんすよ。何となく。
でもね、ルパン三世の面白さっていうのは、実はそういう「何が起きるか」じゃなくて、そのアクロバットの見せ方だったり、身体描写だったり、ドラマだったり、キャラクターの二面性だったり、音楽だったりする訳ですよ。でもね、コンフィデンスマンというドラマはね、ただガチャガチャ騒いでるだけなんです。

もし彼が飛び降りなかったらとか、部下の誰かが飛び降りたらとか、そういうプロットの穴は100歩譲って無視してもさ。肝の部分だから無視したくないけど。そういうトコ無視しても、まあルパン三世実写版の失敗、という形容がぴったり来る。
 
もちろん、間違いなくドラマ制作者はルパン三世なんて意識してないだろうし、勝手に比較されて迷惑だろうと思います。でも架空の空港作っちゃったりとか大掛かりな設定を使う以上、アニメ作品が比較対象になるのは覚悟の上でやるべきだと思うんですよ。
ちなみに小栗旬さん主演のルパン三世実写版はまだ見てません。見た人コメントで感想ください。コンフィデンスマンとの比較検証をいただけると大変幸いです。


5. このドラマの楽しみ方


コンフィデンスマンを楽しむには、「全てを信じる」事が必要です。喋っている台詞、画面上で起きた出来事、全てをありのままに信じるのです。全ては神の意志なのです。その手に委ねなさい。そうすれば救われる(=このドラマを楽しめる)に違いありません。寸分の疑いも許されません。

というワケで、次回もお楽しみに!